『蛍・納屋を焼く・その他の短編』

8fc37237.jpg村上春樹
村上春樹さんの作品は長編はもちろん好きなんだけど、短編にも好きなものが多い。

その中でもこの短編集の中に収録されてる『めくらやなぎと眠る女』は最も好きな作品の中の一つ(中学英語的表現ね)。



都会で勤めてた仕事を辞めて一時田舎に帰ってきた主人公が、5月の風景の中子供の頃のことをふと思い出す、簡単に言っちゃうとそんな話です。

よく知っている風景を見ながら既に自分の居場所はここには無いと感じる主人公の喪失感がうまく表現されてる。冬じゃなくて初夏なところが逆にその喪失感を増してる。



僕自身も田舎から離れてもう随分経って、久しぶりに帰郷してどんなに懐かしい風景に身を置いても何処か違和感、疎外感を感じる。随分遠くまで来てしまったなと。そんな時にこの話を思い出す。



「ある種の痛みの感触さえ、人は忘れ去ってしまうものなのだ。」



ちなみにこの作品は短編集『レキシントンの幽霊』にもshortバージョンが収録されてます。全然そんな印象が無かったなぁ。