ある午後の出来事
渋谷からイヌバスに乗る為にベンチで待っていた時の事。
小学校に入るか入らないかくらいのハーフの男の子とそのお母さんが待ち合い場所にやってきました。
お母さんはその子にちょっと待っててと言って少しの間その場を離れました。
そうすると男の子は僕のベンチ(一人掛)に「ちょっと失礼」とか言って小さなお尻を押し込んできました。
少しずれて二人で1つのベンチに腰掛けました。
その子は僕が手に持っていたコーラを見て話しかけてきました。
「あんまりコーラ飲むとミズボーソーになるから気をつけた方がいいよ」
そして自分の首元のまだ治りかけの水疱瘡の後を見せました。
「あぁ、気をつけるよ。」
僕は答えました。
その後も「このバスここでぐるっと回るんだよ」とか「恵比寿に行くんだよ」とか話しかけてきます。
僕は正直子供というのが苦手です。苦手というか自分が子供だった時以来接する機会がなかったのでどう接していいのかわからないのです。
とりあえず「キミ、幾つ?」と聞いてみました。
すると彼は
「5歳。幼稚園で1番大きいんだ。ひまわり組なんだ。ひまわり組の次は1年生なんだ」と答えました。
そこへイヌバス到着。お母さんも帰って来ました。
イヌバスに乗り込み座席に座るとまた隣にその子が来ました。
更に僕らの会話は続きます。「今日は何処行った?」とか「名前はなんて言うの?」とか。
暫くすると彼は言いました。
「今日はゴローくんの野球の試合があるんだ」ゴローくん???
「ねぇ、今日ゴローくんの野球の試合だよね」とお母さんに同意を求める。
お母さん、「それ『Major』の話でしょ。昨日だよ。見忘れちゃったんだよ」、「テレビの話なんですよ」
おぉ!『Major』かっ!知ってるぞ!ゴローくんはピッチャーだよな!5歳児と同レベルの僕。
そうこうしているうちにうつらうつらと沈没気味。すまん。僕の話術が十分じゃなかったか。
そして彼は「それでは皆さんさようならー」と言って眠い目をこすりながらお母さんに手を引かれてバスを降りて行きました。
もしかするとコーラが欲しかっただけかもな。